近年、「老後破産」や「下流老人」といった言葉が注目を集めています。将来の生活資金をどのくらい準備できているでしょうか。今回は、都内で1Kに暮らす36歳の男性、清田さん(仮名)のリアルな声を通して、現代の働く世代が抱える経済的課題を見ていきます。
清田さんの現在の月収は約30万円、手取りは約24万円です。家賃は管理費込みで8万円、会社からの家賃補助はありません。家賃を差し引くと手元に残るのは約16万円ほど。自炊はほとんどせず、食費がかさんでしまうため、節約が難しい状況です。夏場はエアコンを使いたいものの、電気代を考えるとつけっぱなしにはできないと話します。
最大の悩みは奨学金の返済です。有利子で約300万円の借入があり、心理的負担は大きいと言います。「大学に進学できたことはありがたいですが、返済はただの借金で、生活を圧迫しています」と清田さん。奨学金の返済を滞ると延滞金が発生し、勤務先に連絡がいく場合もあるため、返済は逃れられません。
厚生労働省の『令和6年 賃金構造基本統計調査』によると、30代後半の男性の平均賃金は、大学院卒が約44万9千円、大学卒が約37万3千円、高卒は約28万3千円と学歴によって差が大きく、生涯賃金にすると約4,500万円の差が出るとされています。しかし奨学金の返済負担は、それだけの「代償」を感じさせるものです。
清田さんは「大学時代に思い描いていた未来とは大きく違う。SNSで昔の友人の生活を見て、道がこんなにも分かれるのかと驚いています。自分は『中の下』ぐらいの位置にいると思います」と話します。
金融広報中央委員会の調査によると、30代の借入金の平均は約123万円、借入がある世帯では平均629万円に上ります。清田さんも新卒時から毎月1万円を定期預金に回しており、現在は約150万円の貯蓄がありますが、それでも不安は尽きません。
「老後の不安はもちろんありますが、深く考えられていないのが正直なところです。25歳で時間が止まっているようで、独身で彼女もいなく、なんとなく日々を過ごしていたらもう30代後半になっていました」と語る清田さん。
休日はYouTubeを見たり仕事を片付けたりして過ごすことが多く、「今まで何をしていたのだろう」と虚しさを感じることもあるそうです。
「80歳までこの生活が続くのかと思うと怖いですが、新しいことを始める勇気もない。『こんなはずじゃなかった』と思う一方で、『まあ、こんなもんかな』と諦めのような気持ちもあります。ただ日々が過ぎていくのを受け入れているだけです」と胸の内を明かしました。
このように、多くの労働者が奨学金返済や生活費、貯蓄不足といった経済的な課題に直面しています。これらを乗り越えるには早めの貯蓄計画と収支の見直しが欠かせません。また、社会全体で奨学金返済支援や相談窓口の充実が求められています。
海外ではPwCやFidelity Investmentsなど複数の企業が従業員の奨学金返済を支援する制度を設けており、日本でもこうした取り組みの拡大が期待されています。経済的安定を実現するには、個人の努力とともに、制度面でのサポートがますます重要になるでしょう。
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